「ボク、実はヒツジなんだ…」と、ちょっと悲しそうにKOKOちゃんに告白したBITくん。
人間の言葉をしゃべるヒツジなんて、不思議ですよね。
BITくんは、ある大きな牧場で生まれた羊さん。
でもBITくんは、生まれたときからなぜか人間の話す言葉が理解できたのだそうです。
だから牧場主も、「賢い子だ」と言って、とても可愛がってくれました。
春になると、羊農家では毛刈りが行われますが、BITくんは、この毛刈りが小さい頃から大嫌い!
いつもは牧場主の言うことをよく聞くのに、この時だけは、逃げ回ったり隠れたりして困らせていたのでした。
ある時、牧場主がBITくんに聞きました。
「お前はそんなに毛刈りが嫌いかい?」
BITくんは、つかさず「うん、うん」と、何度も何度もうなずいてみせました。
そんなBITくんを見た牧場主は、BITくんに同情して、BITくんだけ特別に毛刈りをしないことにしたのです。
それだけでなく、BITくんは羊の群れではなく、自分の家で飼うことにしました。
こうしてBITくんは、ますます、人間の暮らしに近づくことができました。
牧場主も、BITくんがあまりにも人間の言葉を理解するものだから、だんだん自分の子どものように感じるようになりました。
そんなある日、BITくんは夢を見ました。
夢の中で、一人の少年が立っていて、BITくんに向かってこう言います。
「君はボクだよ。君は、前世で人間だったんだよ。でもボクは、ちょっとイタズラが過ぎたことで、羊になってしまったんだ」
少年はそう言うと、消えてしまいました。
目を覚ましたBITくんは、不思議な気持ちになりました。
でも、夢に出てきた少年が言ったことが本当なら、うなずけます。
だって、人間の言葉がこんなに解るヒツジなんて、聞いたことがないですから。
その時からBITくんは、言葉を理解するだけではなく、しゃべれるようになるかもしれないと思うようになり、練習してみることにしたのです。
もちろん、そう簡単にはできませんでしたが、BITくんは「いつか必ずできる!」と信じていました。
ある時、牧場主が、家のペンキを塗り替えるために屋根に登っていたら、梯子が倒れそうになります。牧場主はそうとは知らずに梯子に足をかけようとしているではありませんか。このままでは、梯子ともども牧場主が落っこちてしまいます。
BITくんは慌てて駆け寄り、思わず声を発しました。
「危ない!!」
これが、BITくんが最初にしゃべった言葉です。
牧場主は、梯子が倒れることよりも、BITくんがしゃべったことにビックリ仰天。
「世の中には、不思議なことがあるものだ」
こうしてBITくんは、夢で見た少年の言葉を信じ、いつか人間に戻れるために、人間と同じ暮らしをする道を選んだのでした。
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